前の勤務から現金を引き継ぐとき、合計額だけでは「なぜこの金額なのか」「何が未処理なのか」までは分かりません。接客を続けながら確認できるように、残高の根拠と次の担当者が行うことを残しておく必要があります。
現金残高、未処理の入出金、次の勤務に必要な釣銭は、それぞれ確認します。フロントのレジや現金袋をスタッフが数えて引き継ぐホテル・旅館に向けて、既存の記録を使った確認点を整理します。
事前決済後も、フロントで精算が残ることがある
宿泊代金を事前に支払っていても、現地での精算がすべてなくなるとは限りません。楽天トラベルは、国内宿泊単品の予約について、宿泊税は予約金額に含まれず、別途現地で精算するよう案内しています。現地での支払方法は、宿泊施設への確認が必要です。楽天トラベルの宿泊税に関する案内
こうした料金を現金で受け取る施設では、受け取った金額と徴収状況の両方を残します。宿泊税の扱いや支払方法は施設・予約経路などによって異なるため、自施設で実際に現金を扱う項目を確認してください。
引き継ぎと日次締めを分け、確認する範囲をそろえる
勤務交代と、営業日ごとの締めは同じ時刻とは限りません。上田東急REIホテルの公式採用ページでも、夜勤への引き継ぎ、夜間のレジ締め、日勤への引き継ぎが別の業務として紹介されています。フロント担当者の一日
まず、今回の確認が勤務交代のためか、営業日の締めのためかを区別します。そのうえで、現金を数える時点と記録の締切時刻、対象のレジ・現金袋の範囲をそろえます。金庫の現金を含めるかも、最初に決めておきましょう。
既存の宿泊管理システム(PMS)や引き継ぎ表で確認できる項目は、重複して記入する必要はありません。次の表は、確認漏れを見直すための補助資料です。税務上必要な帳簿・書類は、各自治体の案内に従って管理してください。自治体の手引き・帳簿様式(京都市の例)
フロント現金引き継ぎチェックリスト
スマートフォンでは、表を横にスクロールして記入欄全体を確認できます。
1 確認する範囲
| 確認項目 | 記入欄 |
|---|---|
| 対象営業日 | __ |
| 今回の確認期間 | 開始:__/締切:__ |
| 対象のレジ・現金袋 | __ |
| 金庫の現金を含めるか | __ |
| 引渡し担当者 | __ |
| 受領担当者 | __ |
2 現金残高の照合
| 確認項目 | 記入欄 |
|---|---|
| 計算に用いる期初残高 | __円 |
| 期初残高の根拠となる記録 | 記録番号・金額の意味:__ |
| 現金受取(釣銭差引後) | __円 |
| 現金支払(返金など) | __円 |
| 別の保管場所からの移入 | __円 |
| 別の保管場所への移出 | __円 |
| 記録上の予定残高 | __円 |
| 実際に数えた現金残高(実査額) | __円 |
| 照合時点の差額〈実査額−予定残高〉 | __円 |
| 前回からの未解決差額 | __円/参照記録:__ |
期初残高は、今回の確認期間が始まる時点の計算の基準です。自施設で定めた残高の引き継ぎ方法に従い、基準時点と参照記録を明記します。帳簿上の残高なのか、実際の引渡額なのかが分かるようにし、同じ方法で引き継ぎます。
前回からの差額が未解決の場合は、金額・対応状況・担当者を別に残します。期初残高を更新しても、その差額の追跡は続けてください。
確認中も接客が続く場合は、取引の発生時刻と元の記録番号で、今回の締切までの分とそれ以降の分を区別します。現金を数えた後に受け取り・返金・移動があったときは、その増減を追えるようにし、照合する現金と記録を同じ時点にそろえます。最終確認時刻までの増減を含める場合は、表の締切時刻と対象となる取引を更新し、次回の確認期間と重複・抜けがないようにします。同じ時点にそろえられない場合は、自施設の手順に従って再確認してください。
3 次の勤務へ引き継ぐこと
| 確認項目 | 記入欄 |
|---|---|
| 次の勤務に残す釣銭準備金 | __円 |
| 最終確認時刻 | __ |
| 最終的に引き渡す現金の実査額 | __円 |
| 引渡し・受領の確認 | __ |
未処理事項は、次の表に一件ずつ記録します。詳しい内容は既存の宿泊・決済・返金・金庫移動の記録に残し、次の担当者が参照できるようにします。
| 参照記録 | 事項 | 現在の状態 | 次の対応 | 担当者 |
|---|---|---|---|---|
| __ | __ | __ | __ | __ |
| __ | __ | __ | __ | __ |
現金残高は、同じ期間の現金の動きと照合する
指定したレジの残高は、宿泊売上の合計ではなく、そのレジで実際に起きた現金の増減から計算します。
記録上の予定残高=計算に用いる期初残高+現金受取−現金支払+移入−移出
移入・移出は、金庫など別の保管場所との間で現金を動かすことです。同じ移動を現金受取・現金支払にも重ねて計上しません。
次は、ひとつのレジを対象とした架空の例です。確認期間の開始時点では、記録上の予定残高と実査額がともに50,000円で一致し、前回からの未解決差額はなかったものとします。金額は説明用で、ホテルの実績や標準額ではありません。宿泊税2,000円は受取合計の例であり、税率を示すものではありません。
| このレジで起きたこと | 金額 |
|---|---|
| 計算に用いる期初残高 | 50,000円 |
| 現地で受け取った宿泊代金の現金 | +20,000円 |
| 現地で受け取った宿泊税の現金合計 | +2,000円 |
| 現金で返金した金額 | −3,000円 |
| レジから金庫へ移した現金 | −15,000円 |
| 記録上の予定残高 | 54,000円 |
現金受取は、お客様から預かった紙幣・硬貨の額から釣銭を差し引いた金額です。返金3,000円は「現金支払」で一度だけ差し引きます。オンラインで決済済みの宿泊代金は、このレジへの現金受取には加えません。
金庫へ15,000円を移した後は、次の三つを区別します。
- 記録上の予定残高:この例では54,000円です。
- 実際に数えた現金残高(実査額):これから現金を数え、54,000円と照合します。
- 次の勤務に残す釣銭準備金:必要な金額と金種を別に確認します。
その後さらに金庫へ回収する場合は、移動額と時刻を記録し、予定残高を更新します。最終的に引き渡す現金と記録を同じ時点で照合してください。
残高が一致しても、必要な受け取りがすべて完了したとは限らない
たとえば、自施設の取り決めではこの勤務中に現金で受け取るべき400円が、まだ受け取られておらず、未収事項としても記録されていなかったとします。レジの現金と記録が一致していても、この400円の受け取りは終わっていません。
一方、チェックアウト時に精算する取り決めで、まだ支払時期に達していない代金を、ただちに徴収漏れとは判断できません。支払時期・金額・支払状況を元の記録で確認し、「支払時期前」「支払時期到来・未収」「状況確認中」を分けて引き継ぎます。返金も、承認待ちなのか、現金をすでに支払ったのかを区別してください。
差額の確認と、次の勤務の釣銭準備を進める
差額があるときは、数え直しに加えて次の三つの記録から確認します。すべての原因を網羅するものではありませんが、どの記録へ戻るかを整理できます。
- 支払状況と支払方法:未収、オンライン決済済み、現地現金払い、部屋付けのまま未精算などが混ざっていないか。現金をまだ受け取っていない代金を、受取済みとして扱っていないか。
- 現金の移動:釣銭の補充、回収、金庫への移動に対応する記録があるか。同じ移動を二度計上していないか。
- 確認の締切時刻:交代前後の受け取りや返金が抜けたり、両方の勤務に入ったりしていないか。現金を数えた後に受け取りや返金などがあった場合、その増減を含め、現金と記録が同じ確認時点にそろっているか。
確認が終わらない差額は、金額・確認済みの範囲・次の対応・担当者を残し、自施設の手順に従って引き継ぎます。差額を消すために、理由のない補充や記録の変更をしないことが大切です。
釣銭は、総額と金種別の枚数をそれぞれ見ます。同じ金額でも、一万円札だけの現金と、千円札・硬貨がそろった現金では、次の勤務に必要な釣銭を用意できるかが変わります。次の欄で、実際に使う金種ごとの枚数を確認します。
| 金種 | 自施設の基準枚数 | 現在枚数 | 補充する枚数 |
|---|---|---|---|
| __円 | __枚 | __枚 | __枚 |
| __円 | __枚 | __枚 | __枚 |
| __円 | __枚 | __枚 | __枚 |
基準枚数は、実際に受け取る金額、お客様が支払う額面、補充できる時間などから決めます。現金で受け取る料金や税額、支払方法が変わったときも、金種別の必要枚数を見直します。差額が未解決の場合も、釣銭の不足は別に記録し、必要な対応を引き継いでください。
困っている作業から、改善方法と道具を選ぶ
最初に、現金を数える時間と記録を探す時間のどちらが負担かを確認します。未収の確認や転記の修正に時間がかかっている場合、計数機を追加するだけでは解決しません。
| 現場で困っていること | 先に行うこと・検討する道具 | 確認する範囲 |
|---|---|---|
| 釣銭に使う額面が足りない | 金種別基準と補充の時刻・担当者を見直す | 必要な金種がそろっているか |
| 金庫へ移した現金の記録が追えない | 移動元・移動先・金額・時刻を記録でつなぐ | 計数結果だけでは移動理由は分からない |
| 受取・返金の状況を探すのに時間がかかる | 元の記録番号と未処理状態を引き継ぐ | 入金確認と実物の計数を分ける |
| 金種別に分けた紙幣の枚数を何度も数える | 紙幣の枚数を数える計数機を検討する | 枚数計数と混合金種の金額計算は別の機能 |
| 混合金種の紙幣を金額に直す作業が多い | 金種を識別して合計金額を計算する機器を検討する | 実際の通貨・紙幣・混合条件に対応するか |
| 硬貨の計数・金種分けを繰り返す | 硬貨計数・選別機を検討する | 対応通貨、金種別の結果、選別方法 |
現金量が少なく計数回数も少ない場合は、まず保管場所と記録の対応を整える方法があります。機器が主に補助するのは実物の計数です。請求・入金状況の管理、保管場所の記録、現金の受け渡しは、既存のシステムや自施設の運用と結び付けて確認します。
枚数計数と金額計算の違いは「紙幣計数機は枚数だけ?」、機器の比較は紙幣計数機の選び方で確認できます。自動での収受・釣銭の払い出しやPMS連携まで必要な場合は、独立した計数機と同じ機能として扱わず、別に要件を整理してください。
計数作業について相談する場合
MORICASHへのご相談の際は、次の四点をお知らせください。
- 実際に受け取っている通貨。
- 紙幣を金種別に分けているか、混合したままか。
- 1回の勤務で数える量の目安。紙幣は約何枚、硬貨は約何枚か。
- 最も時間がかかる作業。計数、金種分け、記録探しなど。
実際に扱う通貨と計数方法に合わせて、必要な機能を確認します。