AIによる紙幣検査とは?イタリア銀行の研究に見る印刷不良検出
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AIによる紙幣検査とは?イタリア銀行の研究に見る印刷不良検出

AIによる紙幣検査では、画像から印刷不良などの異常を見つけ、専門家の確認を支える研究が進んでいます。イタリア銀行が2026年6月に公表した研究も、そのひとつです。

注目したいのは、AIがどのような違いを捉え、何を判断するために使われているかです。この研究をもとに、印刷品質の検査と偽札の検知を整理し、機器の説明や性能の数字を読む際の確認点を紹介します。

イタリア銀行の研究:紙幣の印刷不良をAIで検出する

イタリア銀行は2026年6月4日、研究論文「Siamese Networks for AI-powered Automated Banknote Quality Control」を公表しました。対象は、紙幣の製造工程における品質管理です。インクの欠け、印刷の位置ずれ、汚れなどを画像から捉え、専門家の検査を補助する方法を検証しています。イタリア銀行の発表

研究では、表面・裏面を合わせた446点の紙幣画像を用い、21種類の欠陥を含むデータで検証しています。紙幣の表面と裏面には、それぞれ別のモデルを使用しました。論文・データの説明(本文8~9ページ)

同じ「印刷不良」でも、位置や大きさ、程度はさまざまです。こうした違いを画像の比較から捉え、検査担当者が詳しく見るべき箇所を絞り込むことに、AI活用の意義があります。

論文では、今後サンプルを増やすことで、モデルの性能や実環境への導入可能性をさらに検証できるとしています。論文・結論(本文15ページ)

シャムネットワークとは?参考画像との違いを学ぶ仕組み

この研究で使われたのが、シャムネットワーク(Siamese Network、シアミーズネットワークとも呼ばれます)です。同じ構造を持ち、学習パラメーターを共有する2つのニューラルネットワークで画像を処理し、画像同士の関係を学習します。

検証時には、検査対象の画像と、欠陥がないことが分かっている参考画像を組み合わせます。印刷不良の見本をひとつずつ当てはめるだけでなく、合格品との類似性を手がかりに判断する考え方です。

限られた事例から学習する「少数ショット学習(Few-shot learning)」を用いることで、集めにくい欠陥データを活用しようとしています。ただし、あらゆる未知の欠陥に対応できるという意味ではなく、研究では専門家による確認を前提としています。論文・モデルの説明(本文9~10ページ)

印刷品質の検査と、偽札の検知は何が違う?

紙幣を画像やセンサーで調べる場合でも、目的によって必要なデータや判断基準は変わります。まずは、機器や研究が次のどの課題を扱っているかを確認しましょう。

検査・識別の目的 主に確認すること 利用場面の例
印刷品質の検査 製造した紙幣に印刷不良などがあるか 紙幣製造時の品質管理
金種の識別 どの額面の紙幣か 金種別集計・合計金額の計算
真偽の確認 真券の特徴と合致しているか 紙幣の受け入れ・現金処理
流通適性の確認 傷みや汚れが再流通に適する範囲か 回収された紙幣の鑑査・選別

この表は、目的を理解するための整理です。ひとつの機器が複数の役割を持つこともあります。日本銀行も、金融機関から戻った紙幣の真偽や傷み・汚れを調べる「鑑査」に、専用の銀行券自動鑑査機を使用しています。紙幣の機械検査そのものは、すでに行われています。日本銀行横浜支店「発券課の仕事」

今回のイタリア銀行の研究は、主に表の「印刷品質の検査」に当たります。そこで得られた成果を、そのまま店頭の偽札検知性能に置き換えることはできません。外国紙幣を扱う際の確認については、外国紙幣の真偽確認に関する記事も参照してください。

紙幣検査の精度は、数字と評価条件をセットで読む

研究や製品説明で高い数字を見かけたら、何を測った数値かを確認することが大切です。「精度」という言葉だけでは、異常を見逃す割合と、正常な紙幣を誤って止める割合の違いが分かりません。

たとえば、この論文の表2では、すべての程度の欠陥を学習に含めた表面モデルのPrecisionが「1.000」と報告されています。ここでの「合格」は、印刷品質上の欠陥がない状態を指します。Precisionは、合格と判定した画像のうち、実際に欠陥のない画像の割合です。偽札の検出率を表す数字ではありません。評価用画像は表面78枚、裏面57枚で、それぞれのモデルを検証しています。論文・表2(本文12ページ)

この結果は今回の評価用画像で得られたものであり、別の紙幣や撮影条件でも同じ性能を保証するものではありません。数字を見るときは、対象紙幣やサンプルの範囲、指標、撮影・処理条件を合わせて確認しましょう。

欧州中央銀行(ECB)が案内するユーロ紙幣の鑑別機器テストでも、偽造券を検出する試験と、真券を正しく受け入れる試験を分けています。また、結果は試験当日のテスト紙幣に対する性能を示すものと説明しています。新しい偽造券への対応を含め、評価には条件と時点があります。ECBのテスト方法・結果の有効期間

現金処理機器の利用者が確認しておきたいこと

今回の研究から得られるヒントは、機器を選ぶ際にも「何を調べ、どのような結果を返すのか」を具体的に確認することです。「AI搭載」という説明がある場合も、次の4点を整理すると、実際の業務との対応が分かりやすくなります。

  • 対象:どの通貨・額面・紙幣の版に対応しているか。
  • 役割:枚数計数、金種識別、真偽の確認など、どの作業を担うか。
  • 評価条件:性能の数値は何の指標で、どのサンプルや設定・ソフトウェアで測ったか。更新はどう行うか。
  • 異常時の運用:異常が通知された紙幣を、誰がどの手順で再確認するか。

今回の研究で目指しているのは、紙幣画像の違いを捉え、専門家の確認や判断を支えることです。現場で技術を活用する際にも、検査の目的と機器ごとの対応範囲を結び付けて考えることが大切です。

枚数計数・金額計算・混合金種の違いは、「紙幣計数機は枚数だけ?」で整理しています。自店で扱う通貨や必要な集計方法について確認したい場合は、MORICASHへご相談ください。

MC

この記事について

MORICASH(運営:株式会社モウリ)は、紙幣計数機や硬貨計数機などの現金処理機器を案内しています。本記事は、公開論文と中央銀行の公開資料をもとに、紙幣検査技術の研究内容と利用時の確認点を整理したものです。

紹介した研究手法がMORICASH製品に搭載されていることを示すものではありません。各製品の機能や対応通貨は、個別の製品情報をご確認ください。

情報確認日:2026年10月18日

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